huruyama blog

学びや子育てやホームスクールなどなど 古山明男さんのコラムが大好きなので ご本人の許可を頂き紹介しています。

本年もよろしくお願いいたします

古山です。自宅で、健康に正月を迎えております。
本年もよろしくお願いいたします。

「これがクリエイティブな状態だ」と思うことを、自分で体験しました。それは、
子どもの自然な状態と同じなのです。それはまた、学ぶことの本質なのだと思い
ます。

その日は自分の体調が悪かったため、仕事や用件をすべてキャンセルして、自宅
で療養していました。鎮痛剤のお世話になっていれば、家の中では普段と変わり
なく生活できました。
1年半ほど注力していた本を書き上げたところでした。気持ちが仕事のすべてか
ら解放されていました。普段だと、「明日の~はどうしたらいいだろうか」、
「次の~の準備のためにあれをしなければ」とかいうものだらけなのですが、そ
れらが突然全部消滅していました。

自分の部屋の中を見回すと、机の上も、床の上も、雑然とあらゆるものが散乱し、
無造作に積み重ねられています。この乱雑な状態のため、「~がない」「~はい
ったいどこだ」で、どれだけストレスになったことか。さりとて、整理をするに
はエネルギーとまとまった時間が必要です。

ところがその日は、突然、床に散乱する書類や本の整理を始めたのです。何も考
えずに始めました。

その日、やらなきゃ、と念頭にあったのは他のことだったのです。で、それはそ
れとして、とにかく床の上に読んだままの本があるから、一冊本棚に戻しました。
そうすると、その隣の本も、あ、これはあっちの本棚だ、と戻す。その下にある
書類はもうご用済みだから捨てよう、と捨てるべき書類の山を作り始めました。
なんだか、判断力が働くのです。「これは捨てる。これも捨てる。お、これ、こ
んなところにあったじゃないか」と、次から次へと取りかかれます。

こんどは机の上に視線が行きます。ほうっておけない気になる。机の上に積み上
げられたものを相手にしはじめました。
やっていると、本棚のここを未整理書類の置き場所にしたらいい。ここは、薬を
まとめて置く場所にしよう。などとアイデアが湧きます。そのうち、プリンター
を載せてあるワゴンを動かせるようにすれば、新しい空間が確保できると気づき、
それをやってしまいました。
何かを死蔵するだけの空間が、出し入れ可能な空間に変身しました。

「やらなきゃ」が何もないから、何も苦になりません。
そういうことを3,4時間やっていたのだと思います。ふと、気がつきました。
「あ、これ、子どものときの状態だ」
子どもの時は、いつもこうだったのです。目の前の物事に入り込んでいます。積
み木を積んでいるとき、工作に熱中しているとき、こんなでした。やらせる自分
とやっている自分に分裂がありません。

何十年も、これを忘れていました。

大人のときと子どものときで、何が違うのか。子どものときには、頭の中のおし
ゃべりがないのです。ただやっています。でも、考えていないわけではありませ
ん。頭は、フル回転しています。
大人になると、いろいろな権威者が頭の中に棲み着いて、あれこれ言っています。
まず、現場監督みたいなのがいます。何をやるときにも、「次はあれして、そう
したらこれして、....」という指示を出しています。そして評価する者がい
ます。「うまくいったぞ。いいぞ」、「この程度か」と言っています。
アナウンサーと解説者が、実況中継をやっている時もあります。「すごいですね。
熱中してやっております。こんなことが、近年あったでしょうか。やはり、片付
けるということは人間にとって大切なことなのです」こんなおしゃべりです。こ
れは実は、注意散漫の一種です。やっていることと考えていることに、エネル
ギーが分散しているのです。

こういうのって、純真じゃないですね。こういうおしゃべりが、新しいものを吸
収するための白紙の部分を、占領してしまっているのです。

学びで一番大事なのは、頭の中のおしゃべりなしに、クリエイティブな状態で学
ぶことなのだと思います。
そのとき、ほんとうの学びが起こっています。先入観がなくて、すべてを新しく
見ています。

「あ、これ、これなんだ。これが学ぶことの本質なんだ」

先に成果を求めている教育は、頭の中のおしゃべりが命令してやらせているので
す。やっているプロセスに喜びがない。だから、習得率が低くて、落ちこぼれが
多くなります。

どんな過去も、どんな権威も持ち込まずに、現在を生きる。
それって、学ぶことに限りません。よい生き方をすることすべての道です。やり
方ではなくて、歌のようなものであり、踊りのようなものです。

(ブログをはじめました。「人間のこと社会のこと」
http://ameblo.jp/afrym/entry-12113009187.html
これとほぼ同じものを載せています。)

 

(注)過去の記事をアップしているため内容に時間差があります。